事務所ブログblog

職場における転倒防止・腰痛予防対策

今年の春頃、長年メーカーの営業職だった友人(50歳代)が、これまでとは異業種である「スーパーマーケット」に転職しました。
人手不足のため、レジ打ちに加え、毎日ダンボール入りのペットボトルを何十箱も倉庫に運ぶようになりました。その結果、腰を痛めてしまい、退職しました。
そのスーパーマーケットとしては、すぐにでも現場でバリバリ働いてもらいたいというのはわかりますが、特に異業種からの中高年の転職者には、ケガ予防指導や少しずつ慣れてもらうような配慮がもう少しあってもよかったのではと。

そんなふうに感じていたところ、厚生労働省において、転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会が開催されているのを知りました。
検討会の※中間整理(令和4年9月27日付)をもとに、以下私なりにまとめさせて頂きました。
※「厚生労働省「転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会 中間整理」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28341.html

1. 検討会開催の目的

下のグラフのとおり、業種別の労災推移は、第三次産業の小売業や社会福祉(介護など)施設が増加傾向で(課題②グラフ)、労災の★事故の型のトレンドとしては「転倒」や「★動作の反動(腰痛等)」による労災が他と比べて大きく増加しています。(課題④グラフ)また、高年齢労働者の労災の特徴として、転倒などの割合が若年世代と比べ大幅に多くなっています。(課題⑥グラフ)

この検討会は、転倒や腰痛などの発生メカニズムは労働者の個人要因の影響も多く、従来型の災害と同様の対策では十分な成果を挙げることができていない状態にあるため、転倒防止・腰痛予防対策の在り方および具体的な対策の方針について、規制の見直しも念頭に置いた検討がなされているものです。

→中高年が多い職場や小売業、介護施設においては注目していきたいところです。

【課題②】業種別死傷災害の推移
【課題④】「事故の型」のトレンド
【課題⑥】高年齢労働者の労働災害の特徴

転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会 第3回資料
【参考資料1】転倒災害・腰痛災害の発生状況と課題
https://office-arai.com/blog/pdf/221103.pdf

2. 検討会中間整理で注目したいポイント
①安全衛生教育の在り方など
  • ・小売業や介護施設などの第三次産業は、人手不足により業務多忙が常態化、顧客や利用者への対応が最優先とされる慣習等から、労働者への雇入れ時の安全衛生教育が適切に実施されていない実態あり。
  • ・転倒や腰痛は、重篤な災害ではないという思い込みや日常生活でも発生し得る災害のため、職場での問題として対策に取り組む認識が低い傾向あり。
  • ・安全衛生教育は、業界の実態や就業者の特性も踏まえ、座学等の既存の手法にとらわれず、短時間の動画にして効率的・効果的な実施方法を提示していくべき。
  • ・転倒・腰痛災害による経済的損失の「見える化」を図り、企業や業界にとって経営上対処すべき課題であることの認識が深まるよう取り組むべき。労災後の社員の休業日数等
  • ・取り組みが生産性向上等の経営上のメリットにもつながることも事業者に訴求していくべき。
②労働者の健康づくり等
  • ・転倒・腰痛災害は、加齢による筋力低下や認知機能の低下、焦りや注意力の欠如等個々の労働者の心身の状況が大きく影響しており、労働者ひとり一人が、事業場における取組や地域における取組を活用しながら心身の健康の維持向上に努めていくことが重要
  • ・若年期から運動やスポーツを通じて筋肉量や持久力などを維持していくことが必要。このためスポーツ庁と連携してスポーツの習慣化を進めるべき。
  • ・骨密度、「★ロコモ度」、視力等の転倒災害の発生に影響するリスクの「見える化」により労働者の健康づくりを促進すべき。
③中小企業等事業者への支援
  • ・労働力のさらなる高齢化を見据え、身体機能の低下を補う設備・装置の導入等について、中小企業等事業者を国が引き続き支援していくべき。

いかがでしたでしょうか。従業員の中高年齢化に伴い、職場における転倒や腰痛などが増加してきています。今後も転倒・腰痛予防対策については、適宜取り上げるつもりです。
ちなみに、次回以降で、転倒予防に役立つ★ロコモ度テストについて、取り上げてみたいと思います。

「文中における用語説明」

★事故の型とは
傷病を受けるもととなった起因物が関係した現象のことをいいます。例えば、機械を修理中に手を挟まれたとか、ガス溶接作業をしていて火傷したなど、災害発生の状況を「事故の型」として示しています。
事故の型は、「墜落・転落」、「転倒」、「激突」、「飛来・落下」、「崩壊・倒壊」、「激突され」、「はさまれ・巻き込まれ」、「切れ・こすれ」、「踏み抜き」、「おぼれ」、「高温・低温物との接触」、「有害物等との接触」、「感電」、「爆発」、「破裂」、「火災」、「交通事故(道路)」、「交通事故(その他)」、「動作の反動・無理な動作」、「その他」、「分類不能」の21に分類されています。
複数の型が競合する場合は、災害防止対策を考える上で、主要なものを選択することとしています。
(参考文献 新・産業安全ハンドブック 中災防発行、労働災害分類の手引き 中災防発行)
→厚労省 職場のあんぜんサイト
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo20_1.html

★動作の反動、無理な動作
上記に分類されない場合であって、重い物を持ち上げて腰をぎっくりさせたというように身体の動き、不自然な姿勢、動作の反動などが起因して、すじをちがえる、くじく、ぎっくり腰およびこれに類似した状態になる場合をいう。バランスを失って墜落、重い物をもちすぎて転倒等の場合は無理な動作等が関係したものであっても、墜落、転倒に分類する。
→厚労省 事故の型分類表
https://office-arai.com/blog/pdf/221103_02.pdf

★ロコモ(ロコモティブ シンドローム)とは
骨や関節の病気、筋力の低下、バランス能力の低下によって転倒・骨折しやすくなることで、自立した生活ができなくなり、介護が必要となる危険性が高い状態を指しています。下肢筋力を調べるテストと歩幅を調べるテストによって、ロコモ度を確認することができます。
→厚労省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-21-07.html

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更新日|2022 11 03

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